2024年4月中旬。
メールに記載されていた通り、入場時刻よりも少し早めに会場へ到着。
受付を担当されていた鬼谷さんにほかほかおにぎりクラブのマイページを見せ、おにぎりの具と会員番号の確認を受ける。
会場入口へと続く階段の端で一列に並び、スマホをいじりながら入場時間まで待機する。
展覧会に集まった見ず知らずの人間が全員あたまゆるゆるインターネットに毎月1,000円払っている身の上だと思うと、少々の気恥ずかしさと同時に謎の連帯感が芽生えてくる。
会員限定かつ定員枠が設けられたイベントということもあってか、自分も含め一人での来場者が多いようで、修道院のような静けさに包まれていた。
時折その沈黙をぬって、階段の上から展示メディアの一部と思しき原宿さんの声がボソボソと聞こえてくるたびに、まだ見ぬ展示への期待が膨らんでいく。
なぜだか風俗店の待合室を想起した。
開場時刻が近づき、鬼谷さんの案内を合図にいよいよ展示室へ足を踏み入れる。
大量のにぎ名が命名時期によって「会いたいアンガスビーフ期」「板郎期」「栗を剥いた手でガラスを触るように」の3つに区分され、それぞれ50音順で記されている。
幾枚もの大きなパネルが小さな文字で書かれたにぎ名でびっしりと埋め尽くされているさまは、壮観の一言に尽きる。
押し寄せるにぎ名の海から自分のにぎ名を見つけた瞬間の嬉しさたるや。
一枠20分という限られた時間の中、小さなギャラリーを何周も巡り、にぎ名の滝を浴び続ける。
マイにぎ名が真葉大寺起床系統の比較的リアルクローズなネーミングだからか、記号やカタカナが散りばめられたぶっ壊れにぎ名に羨ましさを感じることも少なくない。
しかしながら、結局自分のにぎ名が他とは違う特別な響きを帯びていて、愛しいと思えてくるのだから不思議である。
《にぎ名が出来るまで》2024年 映像
会場の外で待っているあいだ、うっすらと聞こえていたボソボソの正体である。
どういう思考回路をもってにぎ名を命名しているのか原宿さん自身が解説している動画なのだが、これが玉音放送ばりの難解さであった。
ホラーコンテンツで時折見かける「おかしくなってしまった人」が支離滅裂なことをいかにも筋が通った話としてもっともらしく説明する姿にも似た、ある種の薄気味悪さすら漂わせている。
既知の言語であるにもかかわらず、文脈が普段使い用のそれとあまりにもかけ離れ過ぎているせいで、意味を持つ言葉として解釈することを耳が拒否してしまうのだ。
原宿さんの日本語として聞けない日本語は、静謐な会場内でのアンビエントなBGMの役割を見事に果たしていた。
オリジナルにぎ名を考えようのコーナー。
記念パピコ^^
会場の片隅では唐突に女子校のグループワークを思わせる風景が広がっていた。
キャプションはついておらず、見れば見るほど謎は深まるばかり。
無造作に広げられた青春。
スクールバッグの中身も手に取って良いらしい。
にぎ名、サイコー❗️👊😄✨